相談の流れ
書き込みの削除のみを希望する場合と、書き込んだ者を特定したうえでその責任を追及することまで希望する場合とでは、その後の対応や時間的制約が大きく異なってきます。
そこで、まずはご要望を十分に確認する必要があります。
次に、相談前に準備して頂いたウェブページのURL、スレッド名、日時、そして書き込みの内容を確認します。
これらの情報を事前にメール等で送って頂けると当日の相談がスムーズに進みます。
なお、自らこれらの情報を証拠化された方は、その証拠資料やデータも相談時にお持ち頂いた方が良いでしょう。
書き込みの内容に関する事実関係は十分に確認する必要があります。
特に書き込みの内容が真実なのか、虚偽なのかは法的手段の可否に大きく影響しますので、正確に事実を把握する必要があります。
また、書き込みの対象が伏字や略称、愛称・蔑称などによって表記されている場合、それが誰を示すものなのか、必ずしも明らかではありません(特定性の問題)。このような場合には、その伏字や略称、愛称・蔑称などの表記が特定の会社や個人を指すものと判断することができる理由についても説明して頂く必要があります。
法的手段の種類と傾向
ウェブフォーム・メールでの請求(任意) | プロバイダ責任制限法のガイドラインに則った請求 | 裁判(仮処分・訴訟) | |
期間 | サイトによって、回答される場合も、回答されない場合もあります。回答される場合、1日~数日で対応されることが多です。 | 多くのサイトは、回答までに1か月前後かかります。 他方、1週間程度で回答するサイトもあります。 | 仮処分の場合、裁判所の決定が出るまでに2週間程度、訴訟の場合、裁判所の判決が出るまでに3か月~6か月程度を要します。 |
効果 | 【削除】 サイトによっては任意に削除してもらえることがあります。 【発信者情報開示】 一般的に難しいことが多いです。 |
【削除】 サイトによっては任意に削除してもらえることがあります。 【発信者情報開示】 慎重な対応をとることが多く、なかなか開示してもらえません。 |
【削除】 裁判所の決定や判決を取得できれば、速やかに削除されます。 【発信者情報開示】 裁判所の判決を取得できれば速やかに開示されます。 |
コスト・手間 | 低 | 中 | 高 (申立費用、出頭費用、供託費用等が別途生じます。) |
適しているケース | ①ウェブフォームやメールでの請求で適切に対処されることが判明しているサイトの場合 ②早急に削除をしたい場合に他の手段と並行して行う場合 |
①個人情報の記載や差別的表現の記載など記載内容自体から権利侵害が明らかなケース ②発信者情報開示は求めない場合 |
①権利侵害の判断において記載内容の真実性が問題になるケース ②確実に対処したい場合 |
法的手段の検討
次の要素を考慮しながら取り得る法的手段、要する時間、費用等の見通しを立てます。
インターネット上の誹謗中傷被害について法的手段を取り得るのは、特定の者の権利利益が侵害された場合に限られます。
書き込みを削除する権限は、多くの場合、発信者ではなく、ウェブサイトの管理者(サイト管理者)やウェブサーバの管理者(サーバ管理者)にあります。
そこで、確認したURL等から問題の書き込みを削除する権限をもつサイト管理者等を特定し、そのサイト管理者等に対して削除を要請するのが一般的です。
なお、任意に削除がなされない場合には、裁判所に投稿記事削除の仮処分命令を申し立てることになります。
発信者は、多くの場合、アクセスプロバイダを介してウェブサイトに書き込みを行います。
このため、通常、サイト管理者等はIPアドレス等のアクセスログしか持っておらず、発信者の氏名・住所に関する情報はアクセスプロバイダが持っています。
そこで、サイト管理者等にアクセスログを問い合わせてIPアドレス等の開示を受け、IPアドレス等からアクセスプロバイダを特定します。
次にアクセスプロバイダに発信者情報(氏名・住所など)を問い合わせて、その開示を受けます。
なお、サイト管理者やアクセスプロバイダから任意に情報が開示されることは稀であり、基本的には、裁判所に訴訟を提起して開示を求めることになります。
各アクセスプロバイダにおけるアクセスログの保存期間は一般的に書き込んだ日から3か月~6ヶ月程度と言われています。
既にアクセスログの保存期間を経過した場合には、書き込んだ者を特定する法的措置を取ることは難しくなります。
そこで、書き込んだ者の特定をご希望の場合には、アクセスログの保存期間内にアクセスログの保存に着手する必要があります。
書き込みの内容が権利利益侵害に当たるか
特定性
インターネット上の誹謗中傷被害について法的手段を取るためには、書き込みを削除したり、書き込みの内容が、閲覧者からみて誹謗中傷の対象である会社や個人を特定できるものである必要があります。
伏字や略称、愛称・蔑称などの使用により個々の書き込みだけでは特定が困難な場合には、書き込みがあったサイト等の内容、スレッドのタイトル、前後の文脈など他の情報と照らし合わせて特定の可否を判断することになります。
たとえば、当事務所(『奏和綜合法律事務所』)を次のとおり表記した場合、これを見た者が当事務所に関するものであると特定可能かどうかが問題となり得ます。
略 称 ・・・・ 『奏和事務所』
愛 称 ・・・・ 『ソウワ』 など
権利利益侵害
書き込みの内容に関する事実関係は十分に確認する必要があります。
事実を摘示して他人の社会的信用を低下させる書き込みについては、名誉権を侵害するものとして、削除などの法的措置を取ることができます。
この場合、表現の自由とのバランスが問題となり、表現内容が真実か否か、公共の利害に関わるか否か、公益目的の有無などを考慮して法的措置の可否が判断されることになります。
Ex. 「〇〇社の製品は不良品ばかりで使い物にならない」など
「バカ」「アホ」など事実の適示を含まない侮辱表現は、その違法性が強度で社会通念上許容される限度を超えたものについては、名誉感情を侵害するものとして、削除などの法的措置を取ることができます。
私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれがある事柄で、普通の人が公開されたくない秘密等に関する書き込みについては、プライバシーを侵害するものとして、削除などの法的措置を取ることができます。
この場合、書き込まれた内容が真実か否かは問題ではなく、公共の利害に関わるか否か、対象者が公人か私人かなどを考慮して法的措置の可否が判断されることになります。
Ex. 「〇〇社の〇〇代表は社員と不倫関係にある」など
①~③の他にも、次のような行為は人格権侵害として削除などの法的措置を取ることができる場合があります。
・脅迫行為
Ex. 「〇〇社長の秘密を住所と一緒に晒してやる」などと脅す行為
・肖像権侵害
Ex. 無断で顔写真等をインターネット上で公開する行為
・電話番号等の公開による迷惑行為
Ex. 「彼氏募集中。電話ください。番号は××××‐〇〇〇〇」などと会社の電話番号を公開する行為
会社のコンテンツをコピーしたウェブサイトや商標権を侵害しているウェブサイトなどについては、削除などの法的措置を取ることができます。
営業妨害となる書き込みや営業秘密を漏えいする書き込みは、社会通念上許容される限度を超えたものについては、削除などの法的措置を取ることができます。